昨年、アニメ映画『もののけ姫』の制作現場を追ったDVD『「もののけ姫」はこうして生まれた。』を観てから(感想記事はコチラ)、『もののけ姫』を足がかりにスタジオ・ジブリに関連する本を色々と読んだので記録しておきます。
ジブリの教科書10 もののけ姫 / 文春ジブリ文庫
『こうして生まれた。』をきっかけに再び『もののけ姫』にハマったことで興味を持った一冊。
作品の制作開始から完成までの道のりや、宮崎駿監督を筆頭にスタジオ・ジブリのスタッフさんへのインタビューが載っているのでDVD『こうして生まれた。』の副読本としても楽しめました。
そのほか、生物学者や民俗学者といったアニメーション業界外の人たちによる論評も載っていて、外側の視点から見つめた『もののけ姫』という作品の姿も浮き彫りになっているように感じました。
アニメーションの色職人 / 柴口育子
スタジオ・ジブリの色彩設計担当者・保田道世さんについて、もっと知りたくなって読みました。
ジブリ作品の「色」を生み出した保田さんの半生について、ご自身が担当されたアニメ作品(東映動画などジブリ以前も含む)の制作エピソードとともに紹介されています。
アニメーションの色彩を考える上で大切にされていることや、監督を支える色彩設計者としての在り方、「仕事」に対する考え方なども語られていて読み応えがありました。
ジブリの教科書18 風立ちぬ / 文春ジブリ文庫
他の『教科書』シリーズを読んで面白かったので、僕の好きなジブリ映画『風立ちぬ』についても読んでおきたくなり手に取りました。
こちらも他の『教科書』同様、宮崎監督へのインタビューや著名人による論評が載っているという構成で、僕の目だけでは見えていなかった作品像に触れることができた気がします。
宮崎監督があえて描かなかった(絵コンテ段階でカットされた)とあるシーンや、作品終盤でヒロイン・菜穂子が発する台詞の変化など、監督がどんな思いを持って作品を作り上げたのか知ることができる記述が特に面白かったです。
天才の思考 高畑勲と宮崎駿 / 鈴木敏夫
ジブリのプロデューサー・鈴木敏夫さんが宮崎駿監督・高畑勲監督の間で板挟みになりながら奔走するなかで見た、お二人の人間性と作品性について語っている一冊。
スタジオ・ジブリ発足から現在までの歴史を振り返る本としても面白いです。 作品制作において多くが苦難(予算や時間など)を伴い、それを知恵と人手を振り絞って打破することで世に届けられているという事実に背筋が伸びました。
ジブリの世界を創る / 種田陽平
『借りぐらしのアリエッティ』・『思い出のマーニー』で美術監督を担当された種田陽平さんがご自身の仕事について書いた本です。
ジブリ以外の映画美術に関する仕事を振り返りながら、実写映画とアニメ映画での美術の違いや、ジブリ作品での美術制作のプロセスなどが語られています。
種田さんとタッグを組んで両作品の監督を担当されたジブリの米林宏昌さんとの対談記事では、『マーニー』の作品世界と美術の関係性や、どのようにアイデアを出していったかが語られるなど、クリエイターの思考の一端に触れることができました。
本へのとびら – 岩波少年文庫を語る / 宮崎駿
宮崎駿監督が岩波少年文庫の中から選んだお気に入りの50冊それぞれに対してコメントを寄せているのですが、着眼点がユニークで「読んでみたい」と興味をひかれる面白さあふれる文章でした。
本の後半では幼少期の本との出会いや読書に関する思い出、ご自身が強く影響を受けたという挿絵に関する話、家族の戦争体験や3.11震災後の世界に対する思いなどがインタビューとエッセイによって語られています。
ジブリ(アニメ)以外の情報から宮崎駿という人物を映し出した一冊だと感じました。
作画汗まみれ(改訂最新版) / 大塚康生
日本のアニメーション文化の礎を築いた職人の一人であり、宮崎駿さん・高畑勲さんの師匠的存在でもあった大塚康生さんの自伝。
大塚さんの仕事とともにアニメ映画(当時は漫画映画と呼ばれた)の誕生と変遷が語られた歴史書としての側面もあり、日本のアニメ産業が今日に至るまでどのように磨き上げられていったのかを知ることができました。
TVアニメの歴史を語る上で欠かせない漫画家・手塚治虫との関わりや、若かりし頃の宮崎駿さんや高畑勲さんとの作品作りについてのエピソードなど、また一つ僕の知らないアニメ業界の歴史に触れることができました。
感動をつくれますか? / 久石譲
ジブリ関連書籍を読み漁るにあたり、すでに読んだ本も再読してみました。 これはその一冊で、7年ほど前に読んで以来の再読です。
数々のジブリ作品の音楽を担当されている久石譲さんがご自身の音楽論・仕事論について書かれている一冊。 僕も前回読んだときから年齢を重ねているので、「プロ」としての作品との向き合い方や仕事の進め方などの部分で心に残る言葉がたくさん見つかりました。
あまり同じ本を何度も読むということをしないのですが、年月が経ってもしっかり覚えている部分や、再び読むことで印象の変わる部分があったりして面白い読書体験になりました。
風の谷のナウシカ(漫画版) / 宮崎駿
昨年、テレビで『風の谷のナウシカ』が放送されたのをきっかけに漫画原作も読んでみたくなり購入。 ……で、今の今まで積んでいたのでした。
読んでまず驚いたのは映画とはかなり内容が異なっていたことです。 映画で描かれていた部分も漫画版に含まれてはいるものの、お話の筋としては多くの違いがありました。
そして、映画版のその先で繰り広げられる壮大なドラマ。 後半の怒涛の展開にはページをめくる手が止められず、全7巻を一気読みしてしまいました。 漫画版の展開を映像で観たいというファンの声にも大きく頷ける内容です。
そういえば、この漫画版の内容をもとに歌舞伎としてアレンジされた演目も上演されて話題になっていましたね。 いつかDVDを観てみたい……!
同じテーマで数珠つなぎに読むのも面白い
今回、ジブリにハマったことで関連書籍を続けて読むという読書を体験したわけですが、同じテーマをもとに書籍を選んでいくのはなかなか面白い体験でした。
特に作品の制作現場を追った内容の本が多かったこともあり、同じ現場での出来事でも語る人によって見え方・感じ方に違いが現れているのが興味深かったです。
一つの事柄に対して考えるときも、それについて書かれた本を複数読んで多面的に情報を取り込むことが大切だと教えられたように感じました。
とはいえ「積みは罪」という自戒は忘れぬように……
ジブリ関連書籍を選定・購入のタイムラグなく一気に読むことができたのは、これらの書籍を買ったまま読まずに積んでいたことが要因だったりします。
これについては「普段からコンスタントに読み進めんかいッ!」という反省の念が強く、これをきっかけに毎日少しずつの読書習慣を取り戻さねばと痛感しました。
本だけでなく周りにあふれる娯楽の数々についても、置いておくだけでは意味がありませんから、しっかりと楽しまねばという気持ちを一層強くしております。
じ、時間がーッ!