アニメ『響け!ユーフォニアム』シリーズの新作劇場版として先日公開がはじまった『リズと青い鳥』。 待ちわびた作品の公開に胸おどらせながら早速観てきました。 感想としてはもう最高。最高です。
希美とみぞれ、二人の世界にフォーカスをあてた作品
今作『リズと青い鳥』は、アニメ『響け!ユーフォニアム2』でもエピソードが描かれたキャラクター、傘木希美(かさきのぞみ)と鎧塚(よろいづか)みぞれ二人の人間関係にフォーカスをあてた作品で、原作は小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』(前・後編の2冊)となっています。
また、『リズと青い鳥』は監督を『映画けいおん!』『たまこラブストーリー』『映画 聲の形』の山田尚子さんが担当されています。その他、キャラクターデザインや音楽など多くの部分も刷新され、今までの『響け!ユーフォニアム』とはまた違う、少し垢抜けたような雰囲気をもった作品となりました。
刷新された作風も物語にとてもよくマッチしていた
今までの『響け!ユーフォニアム』シリーズに馴染みがあったので、イメージの刷新については初めて目にした時は少し驚きました。
ですが、観賞後はこの刷新は英断だと強く感じました。今作の二人のキャラクターの関係に集中して描いた物語の内容や、キャラクターの微細な表情や所作で心情を描く山田監督の作風にもよく合っていたと思います。
キャラクターの歩き方に始まり、立ち位置や佇まい、会話の際の所作などといった繊細な動きによって喋らせることなく感情を描く演出にとても惹き込まれました。
背景など美術全般も今までの作品からさらに写実的な描写へ近づきながらも、淡いカラーでまとめられてどこか儚さが感じられるような画作りでした。
場面の移り変わりは静かに淡々としていながらも退屈を感じさせず、全体を通してゆったりとした・叙情的な時間が流れているように感じられます。
同じ作品世界でも、その切り取り方・描き方の違いに圧倒される
『響け!ユーフォニアム』シリーズでは吹奏楽部存続の危機も訪れるほど全体を巻き込んだ人間模様を描いていたのに対し、『リズと青い鳥』では吹奏楽部として大きな事件が起きることはほぼありません。
部にとっては変わらぬ日常の中で、希美とみぞれ二人だけの小さな世界が静かに変化していく様子が淡々と描かれていきます。全編を通して描かれる二人の関係性の変化を目の当たりにし、その変化に喜びや悲しみだけではない複雑な感情を抱いてしまうのは、キャラクターの想いをセリフで説明させない監督の作品性によるものかもしれません。
だからこそ、作品に触れたこちらがキャラクターの心情を想像する余地が生まれ、とても奥行きのある作品になっているように感じました。繰り返し観ることによって新たな発見があり、感じ方も変わるような楽しみがありそうです。
今までの『響け!ユーフォニアム』シリーズと今作『リズと青い鳥』のどちらも同じ作品世界を有した作品でありながら、物語のどの部分に注目するか、そして、それをどのように描くのかによって、こんなにも違った味わいの作品が出来るのかと驚かされました。
おわりに
発表されて以来、ずっと楽しみに公開を待っていた『リズと青い鳥』。 その期待を大きく上回る満足感を与えてくれた作品でした。
見た目や雰囲気がガラリと変わりながらも、間違いなく『響け!ユーフォニアム』の作品世界であることが随所に感じられ、シリーズ作品としてまた新たな魅力が見えたように思います。
もうひとつ新作映画の公開も決定していたり、原作小説も新たな短編集『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』が発売され、『ユーフォ』熱は増していくばかりで今後も楽しみですね。
リンク
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