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ぶらり紀行

小説家・神永学先生の講演会『わたしを創ったもの』を聴講してきました

山梨県立文学館で開催された、小説『心霊探偵八雲』シリーズなどの作者・神永学先生の講演会『わたしを創ったもの』を聴講してきました。

神永学先生について

神永学先生は山梨県出身の小説家で、2004年に『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』でデビュー以降、多岐にわたる幅広いジャンルで数多くの作品を発表されています。

作品のメディア展開も多数行われており、例えば『心霊探偵八雲』シリーズはTVドラマ・マンガ・TVアニメ・舞台演劇といった様々な媒体で作品世界が描かれました。最近では『怪盗探偵山猫』シリーズがアイドルグループ「KAT-TUN」の亀梨和也さん主演でTVドラマ化されたのが記憶に新しいです。

デビュー作『心霊探偵八雲』シリーズ

神永先生のデビュー作『心霊探偵八雲』シリーズは、現在も新作が発表され続けている人気シリーズです。このブログ記事を書いている2018年7月には外伝「ANOTHER FILES」シリーズの新作『嘆きの人形』の発売も予定されています。(ちなみに『嘆きの人形』では山梨県が舞台として描かれるとのことで楽しみにしています)

死者の魂を見ることができる赤い左眼を持つ主人公・斉藤八雲が、その左眼の力を駆使して数々の事件を解決していくミステリー・サスペンスの要素を含んだ物語です。

家族との間に暗い過去を抱える八雲は、その原因となった赤い左眼を忌み嫌い誰にも心を開くことなく生きてきました。しかし、とある事件をきっかけに出会った小沢晴香(ヒロイン)から赤い左眼を「きれい」だと言われたことや、事件の中で出会う人々や死者の残した想いに触れていくことで八雲の心に少しずつ変化が訪れます……。

ミステリーやサスペンスの要素を含む物語でありながら、ただ事件を解決して終りではなく、事件を通してキャラクターたちの変化・成長が描かれるところが魅力的な作品です。「誰をも拒絶していた八雲が周囲の人物に対して少しずつ心を開いていく」などといった変化が作品を通して丁寧に描かれることで、読者にとってキャラクターの存在感が大きくなっていきます。

神永先生の作品に対して「キャラクターが活きている」と高い評価が数多く寄せられているようです。

「小説家としてデビューするまで」と「創作のコツ」が語られた講演会

講演会では「わたしを創ったもの」と題して「小説家としてデビューするまで」と「創作のコツ」についてが語られました。

学校の図書室に一度も訪れることがなかったくらい本を読むことがなかったことや、映画監督になることを夢見て「日本映画学校」へ進学するも大きな壁ぶつかり別の道へ……といった学生時代のお話にはじまり、低月給・長時間勤務といった過酷な会社員生活を送りつつ寝る時間をおして小説を執筆、新人賞に応募するも箸にも棒にもかからず……というデビューに至るまでの険しい道のりについても明かされました。

寝る間も削って執筆に打ち込んだ当時のことを先生は「とにかく書くのが好きで仕方なかった」と振り返っています。それでも、心身共にツラいはずの生活環境にもかかわらず、自分の夢の実現に向けてひたすら打ち込めるというのは生半可なことではないと思いました。

「創作のコツ」について

その後、先生直々に「創作のコツ」を伝授していただくことができました。

執筆する上で「格好をつけた文章を書かない」ことがとても重要だと語られていました。読み手のことを意識しすぎて自分のことを良く見せようとするあまり、やたらと難しい言葉や言い回しを使ったりして内容がうまく伝わらない作品になってしまわないように注意が必要とのこと。自分の内から自然に生まれた言葉で作品を書くことが大切だそうです。

創作におけるコツとして「全てを説明しようとせず、想像の余地を残すこと」「”五感”と”感情”をリンクさせる」といったことも実例を挙げながら紹介されました。

そのほか、神永先生の作品を例に「登場人物は実在する知人をモデルに作り上げる」、「一人のキャラクターをキャラ自身・その他複数のキャラクターの視点を通して立体的に描く」といった実践的なテクニックも明かされて、貴重な創作の舞台裏に少し触れることができて嬉しいです。

講演のまとめとして語られたメッセージ

最後にまとめとして、創作のためには「人(苦手な人も含む)とたくさん触れ合うこと」「本を楽しみながら読むこと」「書くことを怖れずに自由に表現すること」が大切だとアドバイスで講演を締めくくられました。

「格好をつけた文章を書かないこと」については、創作だけでなく普段の文章作成にも活かせそうです。ついイイことを言おうとしてしまうヨコシマな心は誰にでも生まれがちだと思うので、折に触れて意識していきたいアドバイスだと感じました。

お話の内容はもちろん、その後の質疑応答で予定時間を過ぎてもたくさんの質問に答えていらっしゃる姿に温かい人柄を感じた講演会となりました。

先生の生い立ちや作品づくりの秘密については『赤い事件ファイル』もオススメ

神永先生の創作術に関しては『心霊探偵八雲』シリーズの公式ファンブック『心霊探偵八雲 赤い事件ファイル』もオススメです。

今回の講演でも触れられていた神永先生のデビューに至るまでの道のりやインタビュー、作品づくりの工程(プロット等)、ここだけの書き下ろし短編小説やシリーズ登場キャラクターの紹介など……充実した内容で読み応えある一冊です。

ぶらり紀行

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六味

アニメゲームが大好き。最近は美術館へ足を運ぶことにもハマっています。このブログでは触れた作品や訪れた場所についての感想などを書いています。