ぶらり紀行

山梨県立美術館・特別展『銅版画の詩人 追悼 深沢幸雄展』へ。

2018年10月8日(月・祝)まで山梨県立美術館で開催中の特別展『銅版画の詩人 追悼 深沢幸雄展』を観に行ってきました。僕は今まであまり《銅版画》に触れたことがなかったので今回の展覧会の展示内容は新鮮に感じました。

数多くの作品を残した画家・深沢幸雄

2017年に92歳でこの世を去った画家・深沢幸雄さんは日本を代表する銅版画の一人として大きく活躍し、これまでに1000点を超えるたくさんの作品を残されました

学生時代には美術学校に通い、油彩画を多く描かれていたとのこと。しかし、脚の怪我が原因で創作活動に困難が生じたために机上で作業ができる銅版画の制作をはじめられたそうです。

銅版画制作については全くの独学で、自作の道具を使いながら全て手探りで作品を生み出していた……という記録が残されていました。

作者の心情が反映され変化していく作品に触れる展覧会

今回の特別展『銅版画の詩人 追悼 深沢幸雄展』では、作者が生み出した膨大な数の作品の中から《銅版画》の作品がメインに取り上げられています

加えて、県立美術館では三度目となる今回の『深沢幸雄展』では、氏がノートやスケッチブックなどに書き溜めた直筆の詩・言葉も展示されており、詩集などの著作は発表されていなかった深沢幸雄さんの心情を垣間見ることができる貴重な機会となっているようです。

異国への旅など大きな心境の変化があったことを伺わせる記録とともに展示された作品は、それまでの展示物とは明らかにうってかわった色彩・モチーフが描き出されており、展覧会の順路を追うごとに作者の歩み・内面の変化が伝わってくるような内容でした。

余談ですが、一緒に展示されていた作品の原板(銅板)のサイズには驚かされました。当然のことながら、刷られた作品には同じ大きさの原板が存在しているわけで、銅板を目の前にしたことで作品のサイズを強く実感させられました。

銅版画制作の大変さを初めて知る

今回の展覧会で作品や解説に触れたことで銅版画制作の苦労も初めて知りました。恥ずかしながら銅版画に対する知識があまりなかったものですから、銅の板を彫って刷り上げるだけで出来るものとばかり勘違いしていました。

実際には彫る前に銅板に細かいキズ(凹凸)を作るという準備作業が必要で、これが非常に手間暇がかかる作業だということ。また、彫ることひとつにしても様々な形状の刃物をいくつも使い分けて繊細なニュアンスを生み出していることなどを知り、銅版画に対する理解が少しだけ深められたような気がします。

ちなみに、「銅版に凹凸を作る」作業を自動化するためにご自身で機械を作り上げられたのだとか。《チンタラ一世号》と名づけられた機械は、陶器でできた顔や軍手が添えられた可愛らしい見た目(ちょっぴりホラー?)をしていて、深沢さんの創作活動を大いに助けたそうです。ただの機械にわざわざ顔と手を取り付けるところに深沢さんの人柄が感じられました。

チンタラ一世号》は今回の展覧会で展示されており、実物を目にすることができます

《余談》作者のバックボーンも含めて作品にふれることの魅力

つい最近観たTV番組の中で「作品の鑑賞に正解はない」という旨のコメントが紹介されていました。観た人それぞれが作品にどんなものがどのように描かれているかを自由に想像してよい、という内容で僕もそういった楽しみ方が美術における大きな魅力だと感じています。

また、そういった楽しみ方はもちろんのこと、作者自身のバックボーンや制作当時の心境・時代背景などを踏まえた上で作品と対峙することの魅力も、僕は大切にしていきたいなぁと思っています。

作品鑑賞の面白いところは、楽しみ方を観る人に対して強制することなく、それぞれが違った感想を持つことを受け入れてくれる懐の深さだと感じるようになりました。

今後の展覧会も目が離せません。県外の美術館にも足をのばしてみたいなぁ。

山梨県立美術館 ― 公式ホームページ

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六味

六味

アニメゲームが大好き。最近は美術館へ足を運ぶことにもハマっています。このブログでは触れた作品や訪れた場所についての感想などを書いています。