2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智教授による特別講演『私と美術』を聴講しました。その内容と感想を書いていきます。
大村教授の美術との出会いと歩みが語られた講演会
大村教授は化学者として2015年のノーベル賞受賞で大きな話題をよんだ人物ですが、美術大学の理事長やご自身が設立した美術館(韮崎大村美術館)の館長も務められています。
今回、山梨県韮崎市にある東京エレクトロン韮崎文化ホールで開催された特別講演『私と美術』では、大村教授の美術との出会いや美術品収集家としての歩みなどが語られました。
学生の頃から美術作品に興味があったそうで、古典絵画(ミレーなど)が印刷されたカレンダーの絵の部分を切り抜いて自室の壁に貼っていたというお話から講演がはじまりました。
研究に従事しながらの美術品収集
その後、化学者として研究に従事することでお金を得るようになり本格的に美術品を買い集めるようになったそうです。
ここで美術品収集の源であるご自身の研究について詳しい内容が解説されました。ノーベル賞を受賞した研究内容や開発した治療薬についてや、大きな研究成果を得るための人材育成(外国から講師を招いたり、交流の場を積極的に作るなど)の方法、“一期一会”・出会いが大切だということが語られました。
女流画家の作品との出逢いと転機
美術品の収集を続けていく中で、岡本彌壽子(おかもと やすこ)の「暁の祈り」という赤い衣装を着た女性を描いた作品を観たことが、大村教授が女流画家の作品をメインに収集するようになったきっかけになったそうです。
そして、何人もの女流画家の作品と人物についてが解説されていきました。高齢な画家が多く見受けられましたが、写真に写し出された姿にはそれを感じさせないくらいハツラツとした雰囲気がありました。
その中のひとり、101歳で今なお現役の入江一子さんという画家が100歳の記念で開いた展覧会で語った「今が一番絵がわかる」という言葉が印象に残りました。
大村教授が日々心がけている“黄金のトライアングル”
最後に大村教授が日頃から意識している心得“黄金のトライアングル”についてが語られました。『健康管理』『社会貢献』『一期一会』の3要素からなる三角形で、中心には『趣味』が掲げられています。
まず「健康」な生活を送ること。そして、人材育成と職務を実践することで得た成果で「社会貢献」すること。そのための出会い(「一期一会」)を大切にすること。
加えてもっとも重要である「趣味」を楽しむこと。大村教授は美術品集という趣味があるからこそ、研究を頑張ってこられたと振り返っていました。
おわりに
美術の話のみならず、ご自身の研究について直接お話を聴くことができて良かったです。途中でジョークをはさんで会場の空気を和らげながら話されている大村教授の姿から朗らかな人柄を感じました。
美術品収集については趣味だと話されていましたが、美術館を作ってしまうくらい情熱を傾けられて、そのために仕事を頑張れるような趣味をお持ちだというのはとても有意義だなと思います。