ぶらり紀行

県立美術館『100万回生きたねこ 佐野洋子の世界展』へ

山梨県立美術館で開催中の企画展『100万回生きたねこ 佐野洋子の世界展』を観に行ってきました。

有名な絵本『100万回生きたねこ』をメインに、作者の仕事・来歴に注目した企画展

世に数ある絵本の中でも特に有名なタイトルである『100万回生きたねこ』の作者・佐野洋子さんの残した作品と生涯に注目した今回の企画展『100万回生きたねこ 佐野洋子の世界展』。

題のとおり『100万回生きたねこ』の原画や関連資料を中心に、その他の作品資料や当時の様子をうつした写真などとともに佐野さんの作品がどのように生み出されたのかに迫る内容になっていました。

原画や資料で追っていく佐野さんの仕事たち

入ってすぐ見える『100万回生きたねこ』のコーナーでは、舞台劇として上演された際に使用された小物類にはじまり、絵本の原画、広告として使用された立体ポスター(”ねこ”の毛が本物のようにフサフサした素材でできている)などが展示されていました。

その先では『100万回生きたねこ』以外の絵本作品の原画も並べられており、水彩・油彩・パステルなど……それぞれ異なった画材が使われていることによる作品ごとの印象の違いを楽しむことができました。

また、版画のように1枚の絵に対して1色ずつ何枚もの原画を用意して印刷された絵本では、実際に製作に使われた色別の原画(色を出す部分だけ黒塗りされている)も展示されていて興味深かったです。

作者の暮らしと作品づくりとの関わりを紐解く展示

絵本の原画や資料のほかに、佐野さんの当時の暮らし・ご家族との関係を振り返る内容のパネル資料(写真やご自身のエッセイなど)も展示されており、佐野さんの作品が生まれるに至った経緯などをうかがい知ることができました。最後のコーナーでは佐野さんが愛用していたという日用品の展示も。

その中で触れた佐野さんご本人の「子どものために作品を作っていない」言葉に感銘を受けました。”ウケる・ウケない”ではなく自身の表現したいものをとことん追求することで、老若男女問わず多くの人々に末長く愛される作品が生まれるのかもしれません。

作品からだけでは知ることができない作者の人柄に触れることは、自分と作品との距離をより近くさせてくれるような気がします。(人間性と作品そのものをごっちゃにして捉えてしまうのは野暮なので気を付けていますが)

下書きにみる、言葉を削り出していく試行錯誤の過程

いくつかの絵本の作品資料の中には下書き・アイデア出しに使われた手帳も含まれており、絵本の文章が出来上がっていく過程が克明に記録されていました。

初稿では舞台や登場する動物についてが詳細に述べられた文章が書かれているものの、そこから多くの言葉が削られ並び替えられるかたちで完成版の文として書き出されています。

佐野さんの絵本作品は絵だけでなく添えられている言葉もステキだと今回の展示に触れて感じましたが、あの言葉数を抑えたどこか素朴な文章は練りに練った上で選び抜かれた言葉だったのだと知り驚きました。

色鮮やかな「デジタルリマスター版」の原画に驚く

企画展で目にした『100万回生きたねこ』の原画は経年の劣化によって退色(色あせ)が進んでしまっているそうで、状態の良い原画をもとにコンピューター処理によって当時の色彩を再現した「デジタルリマスター(デジマス)版」と呼ばれる画も別に展示されていました。

見比べてみると色の差はハッキリと感じることができ、原版では気付きにくかった色の重なりも見えてきて新鮮でした。特に青・緑の色が鮮やかになっていた印象があります。

作者の意向としてはデジマス版(当時)の色合いを楽しんでもらいたいけれど、多くの人が退色した原版の方を見慣れてしまっているためか展覧会などでは原版の要望が少なくないという話を聴きました。

作者の想いに反することではありますが、色の変化によって年月の経過を感じられるというのはデジタルにはない、アナログ画材独特の面白さでもあるなぁ、なんて思ってしまいます。デジタル機器によって表現される作品が増えてきている現代において、肉筆画というのは作品の内容とは違った部分で魅力のひとつになっているのかもしれません。

大人だって絵本は面白い

以前、女優の美村 里江(ミムラ)さんの著書『ミムラの絵本日和』『ミムラの絵本散歩』を読んだことで絵本の魅力に惹かれ、色々な作品を読んでいたことがありました。

絵本は子供向けの作品がほとんどかもしれませんが、大人が情熱を傾けて作り上げているものである以上、どんな人が触れても面白いと感じられるものなのだと思います。

今回の企画展では当時感じた絵本を開く時のワクワクするような気持ちを思い出させてもらった気がします。 ちょっと童心にかえるような一日になりました。

敷地内の噴水に虹が。キレイでした。

ぶらり紀行
, , ,

六味

六味

アニメゲームが大好き。最近は美術館へ足を運ぶことにもハマっています。このブログでは触れた作品や訪れた場所についての感想などを書いています。