世の中もまだまだ予断を許さぬ状況ではありますが、昨年に引き続き今年も立川志の輔さんの独演会を楽しませてもらうことができました。 本当にありがたいことです。
これだけが唯一の楽しみな独演会
流行病によりイベント事を主とする楽しみがほとんど奪われてしまって久しい今日この頃。
今年も気になる展覧会などには一つも行けず、いくらインドア派だといえどもさすがに気が滅入る日々が続いておりました。
そんな中で今年も立川志の輔さんの独演会開催の情報を耳にしたのです。 せめてこれだけは楽しみたい、でなければ2021年が文字通り「無」になってしまうという気持ちでした。
詳細を確認したところ、なんと今年はチケットと一緒に「COVID-19抗原検査キット」を購入し、あらかじめ自分が陰性であることを確認した上で入場する……という開催形式がとられるとのことで驚きました。
「安心落語」を目指す運営の取り組みに感謝
チケット販売受付のメールに書かれた「抗原検査キットで安心落語」の文字から想像される独演会運営関係者の方々の奮励に頭が下がりました。
チケット代金も検査キットの分だけ上がっていたものの、きっと運営側の負担もゼロではなかったことでしょう。
当日まで本当に開催できるかどうかが不透明な時勢の中で、工夫を凝らすことで観客が安心して楽しめる独演会を実現してくださったことに心から感謝しています。
一年分の喜びを噛み締めながら聴いた落語
「みどりの窓口」から始まった今年の独演会は言うまでもなくどれも楽しくて、この一年で積もり積もった負の感情を洗い流してくれるような心地でした。
そんな演目の中で初めて聴くものがあったのです。 それが「高瀬舟」。 元は森鴎外が書いた小説で、国語の教科書で目にした人も多いのではないでしょうか。
その「高瀬舟」の内容をほぼそのまま志の輔さんが静かに語っていくという、他の落語とは少し趣向の異なる演目でした。
身振り手振りもほとんどなく、声のトーンも低くて静か、僕らが身をよじれば衣擦れの音でさえ目立ってしまうのではないかというほどに張り詰めた空気の中で語られる物語にすっかり引き込まれてしまいました。
今年は特にこの「高瀬舟」の演目が心に残っています。
「また来年も楽しく聴けますように」と願いを込めて
今年もありがたいことに独演会を楽しませてもらうことができました。 その年ごとに新鮮な面白さを体感させてくれる内容に充実感で胸いっぱいです。
ずっと灰色だった僕の2021年が色どり鮮やかになりました。
これを元気の源として、また来年も楽しく落語を聴くことができるように気をつけながら生活を送っていきたいと思います。