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ぶらり紀行

みんないっしょに贅沢なひと時を。『立川志の輔独演会 in 甲府2024』

一年に一度のお楽しみ、立川志の輔さんの独演会を聴いてきました。 「また一年が過ぎたのだなぁ」と感じさせてもらう風物詩のような存在です。

平日の昼公演でも変わらずの盛り上がり

今年は平日開催ながら時間が早めの昼公演でした。

平日昼公演は初めてとのことで主催側は客足を心配されていたそうですが、フタを開けてみれば例年よりも早くチケットが完売したらしく不思議がってらしたのが印象的です。 こういうのってなかなか先の読みようがなくて大変そう……。

今回はいつもと違った催しとしてダンサーや俳優として活躍されている田中泯さんが育てた野菜(かぼちゃ・里芋)が会場入口にて販売されたそうです。 僕が会場に着いた時にはすでに売り切れてしまっていた様子でちょっぴり残念。

食欲の秋、なんだか美味しい煮物が食べたくなりました。

印象に残っていることメモ

独演会を楽しんで印象に残ったことをメモして残しておきます。

今年の演目は下記の内容でした。(敬称略)

  • 宮戸川 ― 志の太郎
  • 壺算 ― 志の輔
  • 柳田格之進 ― 志の輔

あんなパターンもあるとは

最初は立川志の太郎さんによる「宮戸川」から。 外出で遅くなり家から締め出しを食った半七と、同じように締め出しを“食べた”幼なじみ・お花がたまたま行き合い、ひょんなことから二人いっしょに半七の叔父の家に一泊することとなり……というお話。

早とちりな叔父に勘違いされて布団が一組しかない部屋に通されたうえ、文字とおりハシゴを外され二人きりにされてしまう。 突如として鳴りだした雷に驚いて半七の胸に飛び込むお花、それを抱きとめる半七、そして……。

ドキドキしながら聴いていた先に待っていたまさかのサゲに「こんなパターンの落語もあるのか!」と衝撃を受けました。 面白いなぁ。

数字にまつわるおかしなお話

つづいて志の輔さんが登場。 マクラは今まさにホットな選挙に関するお話から。 いつも選挙速報で開票が5%ほど進んだ時点ですぐ当確が明らかになってしまうのが納得いかない、と。 それに対して数学者の秋山仁先生が「それが統計学です。 鍋でお味噌汁を作って味見するのにどんぶり使いますか?」 「小皿を使いますね」 「それが5%ですよ」という会話があったと紹介されていました。

このお話、過去に聞いた覚えがあったんですが何度聞いても面白いし目からウロコが無限に落ちてきちゃいます。

秋山先生の紹介に際し、最近Eテレで放送されていた番組『3か月でマスターする数学』に触れられていました。 数学落伍者の僕にもわかりすい内容で数学をやり直してみようと感じさせてくれた面白い番組だったのを思い返し、個人的にタイムリーな話題が挙がってテンション上がってしまいました。

そして、選挙での議席数の計算に関する話題から演目「壺算」へ入っていきます。

生活用の水を貯めておく瓶(かめ)が割れてしまい新たに買い替えたいと考えている男が交渉上手な知人を頼って一緒に店を訪れ、商人を相手に少しでも安く売ってもらおうと値切り交渉に奮闘するというお話。

かなり強引ながら言葉巧みに値下げを要求して商人を丸め込んでいく様子が痛快でした。 聴いているこちらも途中から頭の中で数字がこんがらがってきて商人と同じ気持ちが味わえました(笑)

作品を楽しめただけでなく、この噺が関西ルーツなこと(「こちらの思うツボや」というサゲ)や東京へ移入される際に内容が変化したなどといった豆知識も知ることができて面白かったです。

実話をもとに作られた噺

次の演目は「柳田格之進」。 今年、草彅剛さん主演で碁盤斬り』というタイトルで映画化されました。

歓喜の歌』・『大河への道』といった志の輔さんが作った落語をもとにした映画の話題から“映画化された噺”に絡めて「柳田格之進」の噺へと入っていきます。

貧乏ながらも武士としての誇りを捨てず実直に生きる浪人の男が、ある日50両もの大金が消えた騒動の犯人として疑われて……といったところからはじまる人情噺。 お金と命が関わる終始シリアスな内容ながらも随所にちりばめられたコミカルな人物描写が面白く、作品の雰囲気が重苦しくなりすぎない緊張と緩和の絶妙なバランスを感じました。

そういえば「柳田格之進」は志の輔さんのDVD/BD BOX限定の特典ディスクに収録されていますね。 BOXの第2弾、出ないかなぁ……。

贅沢な時間を共有すること

演目が全て終わったあと最後の語りで、映画や演劇などはすごい(もちろん落語も)、それが今では家にいながら手元の端末で手軽に楽しめてしまう。 だからこそ時間とお金をかけてわざわざ足を運んだ先で大勢と楽しさを共有する体験はとても贅沢なことだと語られていました。 そしてそれを教えられたのはコロナ禍がきっかけだった、とも。

こうやって気兼ねなく出かけられる日々が戻ってきて本当によかったです。 (まだまだ油断はできませんが……)

実際にイベントの現場に赴いて楽しむ行為は当日の自分の体調はもちろん、演者さんや関係者さんたちの体調、現地の天候、交通機関の状況など数多くの歯車が全て問題なく噛み合って初めて実現するもの。 その事実に思いを馳せると非常に尊いもののように感じられます。 過去、楽しみだった催しを台風にブッ飛ばされた経験があるだけに……。

どんな物事も続いていくことは決して当たり前ではない、楽しめるありがたみをしっかり噛み締めていこうと思いました。

《余談》 映画も観たいのだけれども……

「柳田格之進」をもとにした『碁盤斬り』、田中泯さんが葛飾北斎役を務めた『HOKUSAI』……と、志の輔さんがお話されていた映画についてはタイトルだけ知っているような状態だったので時間を見つけてチェックしなくては。 最近映画を観れていないなぁ……。

志の輔さんが最後の語りの中で「映画館へ行って観た作品は忘れることがない」と話されていて、たしかにそうだと思いました。 小さい頃に連れて行ってもらって観た映画とか今でも鮮明に思い出せますもの。 ポップコーンの味までも。

手元の端末やテレビで観るのでなく、劇場での体験として味わうからこそ記憶に深く刻み込まれるのかもしれませんね。

外部リンク

志の輔らくごウェブサイト – 公式サイト

ざぶとん亭風流企画 – 公式サイト

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六味

アニメゲームが大好き。最近は美術館へ足を運ぶことにもハマっています。このブログでは触れた作品や訪れた場所についての感想などを書いています。