
糸井重里さんのトークショーが近所で開催されるとの情報を耳にしたので聞きに行ってきました。 生で見られて嬉しい!
図書館の館長と著名人が語り合うトークイベント
先日足を運んだのは山梨県立図書館にて開催されたトークショーで、館長の金田一秀穂さんと「ほぼ日」でおなじみの糸井重里さんが「今、読みたい本」をテーマに語り合うという催しでした。 金田一館長が著名人を招く同様のトークショーは年に数回行われているそうです。 以前、山梨出身の作家・辻村深月さんのトークショーを同じ場所で聞いたのを思い出しました。
金田一館長と糸井さんのお話はトークショーのテーマである「今、読みたい本」からは少し距離を置きつつ“本”や“言葉”に関する話題を軸にしたかなり自由な内容で、お二人の間で二転三転する面白い世間話を会場で楽しく聞いていました。
お話を聞いて印象に残った言葉を書き留めたメモの中からいくつか拾ってまとめてみたいと思います。 なお、一字一句漏らさずメモできたわけではないため記憶違いの部分があったりするかもしれません。 あしからず。
糸井さんと本
今回のトークショーでは糸井さんの本との向き合い方がわかる言葉がいくつかありました。
普段から本をよく買うけれど買ったまま読んでいない本もたくさんあるそうで「それでもお金を出して本を買うことが大事だと思う」と話されていました。 買う理由があって本を手に取るのは読むことの第一歩なのだとも。 積ん読に対する罪の意識が少しだけ軽くなります(笑)
また、糸井さんにとって本を読むのは種を植えることに近いのだそうです。 興味のカケラを集めるように本を選び、もし途中で読むのをやめてしまったとしても書かれた内容について少しでも知ることで知識の引き出しができて教養になっていくのだと思う、とのこと。
他にトークショーの中で強調されていたのが「読書をするから偉い、なんてことはない」という言葉。 読書をする人、読書の楽しさは尊重しつつもみんながみんな本を読む人である必要はないのではないかと話されていました。 これを聞いて読書に対してどこか崇高なイメージを持っている自分の存在に気づいてハッとしました。
生成AIの話題も
本=文章という繋がりから近ごろ急速に広がっている生成AIに関する話題も挙がりました。
お二人とも生成AIによって出力された文章を目にした経験をもとに「現状の生成AIは表現の舞台において人間の代わりにはなりえないだろうが、今後もっと進化してそれすら実現する世の中になっていくはず。 そうなった時、私たちはどうするべきか(今はまだ答えは出ず)」といった見解を示されていました。
言葉と密接に関わる側であるお二人の生成AIに対する考えを聞けたのは興味深かったです。 僕は画像生成AI周りのてんやわんやを現在進行形で目の当たりにしているので使ってみようという思いは微塵も湧きませんが、生成AIも世の中も人間もこの先どう変わっていくのでしょうね。
また、質疑応答の時間には生成AIに関連して「学校では履歴書の志望動機欄を生成AIを使って書かせている。 指導の在り方や生成AIの活用法としてこれはいいのだろうか。」という質問が挙がってとても驚かされました。 もうそんな時代なんだ……。
この質問に対して糸井さんは「一度生成AIにやらせてみたらいい。 ちゃんとした文章でも人が書いたものと比べるとおそらく違和感が出てくる。 生成AIには向き不向きがあるのを知る機会になる。 生成AIは表現することは得意じゃないので、“妙に物知りな友達”のような存在として調べ物などを頼むのがいい。」と答えていました。
金田一館長オススメの古典
「今の時代に古典を読むメリットとは?」という別の質問の中で金田一館長が『新古今和歌集』の大岡信による現代語訳版をオススメされていました。
詩的な言葉で訳されていて良いのだそうです。 自分の中の「次に読みたいリスト」に加えておこうっと。
館長いわく、古典は難しくてよくわからなったとしても良いものであることは間違いない。 時には学びから離れて素直に「すげえ」と声を漏らしながら読んだっていい、とのことです。
お二人からメッセージ
最後にお二人から観客に向けてメッセージをいただきました。
糸井さんは「読書は試験勉強ではないので読むのも読まないのも自由。 好きにやっていい。 他人と関係なく楽しめるのが読書の良いところ。」と、金田一館長は「図書館には膨大な量の本が所蔵されていて、まるで迷路のよう。 全てを読むなんてできっこない。 本を読んで何かを知れば知るほど知らないことが新たに増えていく。 それに恐れず立ち向かうことが大切。」と話していました。
金田一館長は加えて「物事を自分で考えるのが大事。 他人には聞かずに自分自身で地図を作り上げていく。 “脳”ではなく“心”や“身体”で考えることが大事な時代になっていくと思う」と締めくくっていました。
まとめ
テーマの「今、読みたい本」からもう一歩踏み込んだ聴き応えある色々なお話が聞けてよかったです。 上で書ききれないくらい様々な話題が挙がっていました。
僕は糸井さんの「読書をするから偉い、なんてことはない」という言葉がすごく刺さっちゃいました。 自分の中に少なからず驕りがあったかも……と背筋を伸ばす良いきっかけをもらえたように思います。
それと「積ん読してもいい(超訳)」という言葉を胸に刻んで気になった本はどんどん買っていこうかな。 「いつか余裕ができたら買おう」なんて思っていたら絶版に、なんて珍しくもないですからね……。
蒔いていこうぜ、種。
《余談》 積ん読と入門書の話
今回の内容とはあまり関連のない「絵」の話なんですけど、描き始めた頃に入門書として有名な『やさしい人物画』(通称ルーミス本)を買ったんです。 初心者としてたしかに勉強になる内容だったんですが、全てを理解するにはまだレベルが足りなくて長いあいだ本棚に眠らせることになりました。
しばらくして誰もが経験するであろう伸び悩む壁にブチ当たる時期がやってきます。 そこで何か救いを求めて自分の本棚をひっくり返したところ眠らせていたルーミス本と再会したんです。 驚いたことに、買ったばかりの頃は難しくて読み飛ばしていた項目の内容こそが今まさに求めていたもので悩んだ状態から救い出してくれました。
ルーミス本は図の解説もさることながら、文章部分にこそ栄養が詰まっているように感じます。
「買って読まない状態であってもいい」という糸井さんの言葉に自分の中で納得感があるのはこういった経験を経ていたからかも、なんて思い出していました。 いつか読むために今買っておく、まさしく種を蒔いているみたいですね。













