アニメーターの香川久さんと馬越嘉彦さんによる「闘う女の子キャラクター(バトルヒロイン)」の描き方を解説した書籍『香川 久 × 馬越嘉彦 バトルヒロイン作画 デザインテクニック (玄光社MOOK)』を読みました。
数多くの作品でアニメーターとして活躍されている香川久さん・馬越嘉彦さんのお二人と「バトルヒロイン」が大きく関わっている作品がアニメ「プリキュア」シリーズです。
主人公の女の子たちが平和を守るために悪と闘う「プリキュア」シリーズ。2004年にシリーズ第1作目『ふたりはプリキュア』の放送が開始されてから10年以上、今もなお新作が製作され続けている人気作ですが、第6作目『フレッシュプリキュア!』では香川さん、第7作目『ハートキャッチプリキュア!』では馬越さんがそれぞれキャラクターデザインを担当されました。
この本は、そのお二人による「バトルヒロイン」を描く上でのテクニック・ノウハウが随所に詰め込まれた一冊となっています。
本の冒頭ではお二人が担当された「プリキュア」シリーズのキャラクターの紹介と、キャラクターを作画する上で重要なポージングや表情描写のコツなどといったテクニックが解説されています。
そしてメインの内容として、お二人がこの本のために考案したバトルヒロインたちをイラストとして描き起こしていく過程が詳細に解説されていきます。
また、巻末にはお二人へのインタビューも掲載されていました。
「プリキュア」シリーズのキャラクター紹介と作画テクニックの項では、実際のアニメ作品に採用されたキャラクターたちがどのような点を意識して作り出されたのかを知ることができたり、お二人のイラストによる作画テクニックの解説を読むことができたので、お二人の絵が好きな僕には嬉しい内容でした。
本書のメインであるバトルヒロインのデザインは架空の作品『プリンセス!』シリーズのキャラクターをデザインするという内容の項ですが、架空の作品でありながらもストーリーやヒロイン・悪役のプロフィールなどといった細かな設定が用意されており、実際のアニメ作品のキャラクター製作かのような真に迫った解説内容となっていました。
それぞれヒロイン(3人)+マスコットキャラ+悪役をデザインしていく過程がご本人のコメント付きで解説されていましたが、見た目の特徴・しぐさによって性格までも感じ取れるような魅力的なキャラクターが作り上げられていく過程には勉強になる要素がたくさん含まれているように感じられました。何度も読み返したくなります。
また、まずは香川さんが『ラブ・プリンセス!』のデザインを、続けて馬越さんが『ピュア・プリンセス!』のデザインをしていくという構成でしたが、馬越さんの『ピュア・プリンセス!』が香川さんの『ラブ・プリンセス!』の続編という設定になっているのが面白かったです。
それによって香川さんがデザインしたヒロインが続編に登場するという設定もあり、馬越さんが成長した前作のヒロインをデザインされていたのですが、絵柄が異なるお二人のイラストでありながらもちゃんと同じキャラクターだと感じられるのには驚きました。
この本はイラスト集とはまた違って、お二人のノウハウやテクニックの部分をより深く掘り下げた内容になっているので個人的はまさしく秘伝の書といった印象です。
ふつう、最前線で活躍されている人たちの生の技術・思考というのは簡単にはお目にかかれるものではないと思うので、書籍というカタチで誰でも手に入れられるというのは凄くありがたいことだなぁと感動しました。